わが子の心豊かな未来を願う、家族の思いが詰まったランドセル。選んだきっかけや、こどもたちに寄せる思いとは……。ランドセルとご家族の数だけ、あたたかな思いがありました。
昔ながらのシンプルな形に引かれて
INTERVIEW:伊東さんご一家(2016年11月取材)
写真家のご両親のもと、元気いっぱいに育つ優作くんは小学4年生(取材時)。牛革 ベーシック・黒のランドセルを使ってくださっています。手足が長くてスラッとした優作くんですが、なんと、相撲歴4年のちびっこ力士。市の大会で優勝経験もあります。
家族の“今”はかけがえのないもの。
だから、時間をカタチにして残す。
週6回、電車で2駅先の相撲道場に通う、がんばり屋さんの優作くん。普段はちょっとマイペースな面もあるそうですが、土俵に立つ姿は勇猛果敢。「真っ赤な顔で歯をくいしばってがんばる姿を見ると、ぐっとくるものがあります」とお母さんのかおりさんは言います。「ただいまー!」と学校から帰ってくると、ランドセルをポーンッと放って、おにぎりを食べてから宿題をするのが優作くんの日課です。「丈夫なランドセルですよね。特別なお手入れをしているわけではないのに、きれいですし」とかおりさん。お父さんの俊介さんは、「昔ながらの形のシンプルなところがいい」とおっしゃいます。
俊介さんは、全国各地をめぐり、ギャラリーや雑貨店などで出張写真館を開いています。これまでに撮影したのは、延べ7,000組以上。俊介さんが撮るのは、正装で背筋を正して撮る記念写真ではなく、いつもの姿を残す、普段着の写真です。「人生は特別の積み重ねじゃなくて、普段の積み重ね。だから、ありのままの“今”の姿を残したいと思っています」と話します。いとう写真館のホームページをのぞくと、伊東さん一家を1年ごとに撮影した写真が載っています。優作くんが生まれる前、赤ちゃんのとき、幼稚園のとき。「写真を毎年撮って、“今”を残すことは、時間をカタチとして残すということなのかな」と俊介さん。そして、「同じ10年でも、『ああ、もう10年経ったのか』ではなく、写真を見返すと『けっこういろいろあったな』と思えますよね」と続けます。俊介さんにとって写真は、“今”を未来に残すものなのだそうです。
いとう写真館の写真は、フィルムカメラで撮るモノクロ写真です。現像とプリントは、職人さんによる手仕事。デジタルではなく、フィルムで撮る理由を尋ねると、「フィルムは残るし、消えないもの。家族や大切な人との写真は消えてはいけないものだから」。手焼きにこだわるのは、いろいろな人の手がかかったほうが、人の思いが重なって、ぬくもりや厚みが増すからなのだそう。伊東さんのお家には、優作くんの小さいころの写真がたくさんあります。写真1枚1枚から、その時一瞬一瞬の思いが伝わってきて、胸がぽかぽかとあたたかくなりました。優作くんが小学校を卒業するときは、どんな表情でカメラの前に立つのかな。味わいを増したランドセルは、どんな風になっているのかな。2年後の写真が、とても楽しみです。(2016年11月取材)
伊東俊介さん、かおりさん、優作くん
お父さんの俊介さんは日本各地のいろいろな場所で出張写真館を開く写真家。お母さんのかおりさんも写真家で、不定期で出張写真館を開催しています。「『いい写真を撮ろう』というより『いい時間にしよう』という思いのほうが強い。撮ったその時間も写真の一部だから」と俊介さん。土屋鞄では、春に開くフォトコンテストの大賞ご家族を、俊介さんの出張写真館にご招待しています。
[いとう写真] http://www.ito-photo.net