6年間という年月を一緒に過ごすランドセル。長い時間の中で、こどもたちにとって、そして親御さまにとって、どんな存在になっていくのでしょうか。小学校卒業後のご家族に、ランドセルの使い心地や思い出を伺いました。
卒業まで好きだった
自分で選んだ色
INTERVIEW:ミコトさんご一家(2024年5月取材)
8年前、土屋鞄のランドセルを背負っていたご縁から、カタログの撮影に協力してくださったあおいくん=写真右。当時小学校1年生だったあおいくんも、今では高校1年生に。一つ年下の弟・ゆいきくんは、その時まだ年長さんでした=写真左。
※写真のランドセルの中には、現在販売されていないモデルもあります。
こどもたちと過ごしたランドセルは
6年分の時間そのもの
あおいくんの時もゆいきくんの時も、ランドセルを見に行ったのは西新井本店だったそうです。母親のミコトさんは、「他のメーカーのランドセルも調べましたが、6年間使うことを考えるとシンプルなものがよかったので、来店したのは土屋鞄だけに。この中であれば、どの色でも素材でもいいなと思ったので、選ぶのはこどもたちに任せました」
ずらりと並ぶランドセルの中から、あおいくんは牛革のチャコールグレーと緑で悩み、最終的に自分でチャコールグレーに決めました。
「あおいが使っていて気になるところはなかったので、ゆいきも同じ土屋鞄で。土日の混雑を避けて、平日の保育園の帰りに見に行きました。ゆいきは迷うことなく、牛革のオレンジを選んだのを覚えています」
当時のことを2人に聞くと、「覚えていないかも……」。けれども、母親の話を聞いているうちに少しずつ思い出したようで、あおいくんは、「黒や青のランドセルを背負う友だちが多かったけれど、自分の色がかっこいいと思っていたから、うらやましいと感じたことはなかった。その後も好きな色を持ててよかったなって、ずっと」
ゆいきくんは、「ランドセルを選んだあのころは、オレンジがすごく好きだった気がする。今でも好きな色」。ランドセルのスタンダートな色ではないけれど、毎日背負い続けるうちに当たり前の存在になっていたから、飽きるとか飽きないとか、そういうことをそもそも考えたことはなかったと言います。
卒業してから数年経った今も、ランドセルはクローゼットの中に。ミコトさんはランドセルを手にしながら、「2人とも意識して丁寧に使っていたわけではなかったけれど、傷ついたとか潰れてきたとかはなく、6年間きれいなままで。もったいないという思いがあって、なかなか手放せなくて」
6年間を振り返ってみてどうだったかと2人に尋ねると、「ランドセルはそばにあるのが当たり前の存在だったから、愛着とかそういう感覚はまだわからないかも」と素直な言葉が。
ミコトさんは、「この子たちにとって、ランドセルが思い出になるのは、まだ先のことなんでしょうね。自分のことを振り返ってみても、幼いころの時間が思い出になるのは、大人になってからだった気がします。たぶん2人は、ランドセルとそれぞれの色を、こども時代の象徴として鮮烈に思い出すんじゃないかなって」
そう考えると……とミコトさんは続けます。「元々ものを捨てられない性格なんですが、今もランドセルを保管しているのは、大切な思い出を手放したくないからかもしれません」
こどもたちとお店で選んだこと、小さな背中を送り出した日々のこと、卒業式の朝に「最後のランドセル姿になるんだ」と感慨深く見送ったこと。
「鞄という『もの』ではあるけれど、こどもたちのために毎日働いてくれたランドセルは、この子たちの6年分の時間そのもののような気がします」とゆっくりとうなずきながら話してくださいました。
小学校時代の思い出として昇華されたランドセルが、あおいくんとゆいきくんの中に幸せな記憶として生き続け、大人になった2人の心を支える存在となることを願っています。
ミコトさん、あおいくん、ゆいきくん
「130cmを超えるとかわいいこども服を見つけづらい」という思いから、得意なものづくりを生かして「SWOON」というブランドを立ち上げたミコトさん。2人にどんな大人になってほしいか伺うと、「やっぱり健康でいてほしい。そして、自分にとって少しでも楽しい気持ちでできる仕事を見つけてもらえたら」と優しい眼差しを向けました。
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