ランドセルは日本独自の通学鞄ですが、海外で暮らすご家族にとってどのような存在なのでしょうか。ヨーロッパで暮らしながらランドセルを愛用しているご家族に、お話を伺いました。
※写真のランドセルには、現在販売されていないモデルも含まれます。
家族と一緒に海を渡った
兄弟お気に入りのランドセル
INTERVIEW:Nさんご一家(2024年9月時点)
お父さん、お母さん、長女、長男=写真右、次男=写真左のご家族5人でハンガリーで暮らしている。7年前に日本で購入したランドセルは、現在次男の息子さんが愛用中。
届いたランドセルとともに
海を渡ってお引越し
現在、日本から遠く9千キロ離れたハンガリーで暮らすNさんご家族。ランドセルを選びにお店を訪れたのは、7年前のことでした。
「現在中学1年生になった長男のランドセル選びをしていた当時は、日本で暮らしていたんです。友人のすすめで足を運んだ土屋鞄のお店で、息子がすごくうれしそうに試着していた姿を今でもしっかり覚えています」。ハンガリーからオンラインでインタビューを受けてくださったお母さんは、目を細めます。
店内に並んでいたランドセルからいくつか試着して、「黒より少し明るさのある色が、息子の雰囲気に一番しっくりきて」と紺色に決定。
そして、自宅へ届けられたランドセルは、ご家族の引っ越しにあわせて海を渡りました。
「チェコで3年、その後ハンガリーに移り3年。日本人学校に通う長男が6年間愛用しました」。
そして、次男の息子さんが入学を迎えるころ。
日本にいるおじいちゃんおばあちゃんから「新しいランドセルを用意したい」という申し出があったそうですが、「卒業が近づいた長男のランドセルがとてもきれいなままで。祖父母の申し出は、気持ちだけいただいて。長男のものをそのまま次男に引き継ぐことになりました」。
物心つくごろから海外で育っていた次男の息子さんも、お兄ちゃんの通学姿を見てランドセルに憧れを抱いていたそう。お兄ちゃんから引き継いだ紺色のランドセルを背負って、ハンガリーで日本人学校小学部へ入学しました。
「シンプルなデザインだし、色も落ち着きがあって、飽きずに長く使えますよね。お弁当も入れて毎日たくさんの荷物を持っていくのですが、お気に入りのランドセルと一緒に毎日元気に通学しています」。
海外で暮らしていても
ランドセルを使い続ける思い
チェコやハンガリーにある日本人学校の通学事情を伺うと、通学鞄の指定はないのだそう。
それでも、「ランドセルを使っているのは、わが家だけではありません。どちらの国でも、半分以上のこどもたちが使っているんですよ」。
理由を尋ねると、用途ごとにサイズが分けられたポケットやたくさん荷物が入る構造、そして毎日使っても形崩れしない丈夫さなど……。機能面に対する感想に加えて、印象的な言葉が続きました。
「こども自身が背負うのを楽しみにしていたり、祖父母がお祝いに用意したいと声をかけてくれたり。海外で暮らしていても、ランドセルは、“こどもの成長を見守ってくれるもの”として特別なのだろうなと思います」。
桜並木で撮影した写真が
家族の思い出の1枚に
お祝いにランドセルを用意したいと申し出てくれたおじいちゃんとおばあちゃんに届けたという写真を見せていただくと、そこには桜の木が写っていました。
「ハンガリーにも、春になると桜がきれいに咲く地域があるんですよ。次男が入学を迎えた春、ランドセルを持って家族でちょっと正装をして撮影に出かけました」。
ランドセルを使い終えたお兄ちゃんにとっては“ランドセル卒業”の記念に。そして、ランドセルを引き継いだ弟さんにとっては“小学校入学”の記念に。思い出の写真をランドセルと桜と一緒に撮影したのだそう。
「息子たちの姿を見て、大きくなったなあと、ぐっときちゃいました」。
たとえ暮らす場所がどこであったとしても、こどもの成長を願うご家族の思いは同じ。そこに、ランドセルがそっと寄り添える存在でありますようにと願っています。