6年間という年月を一緒に過ごすランドセル。長い時間の中で、こどもたちにとって、そしてご家族にとって、どんな存在になっていくのでしょうか。ランドセルリメイクをご利用いただいたご家族に、お話を伺いました。
「記憶」を形にして残す
INTERVIEW:石川さんご一家(2023年10月取材)
「大人になってもずっと、娘を支え続ける存在でいてほしい」という願いを込めて、小学校卒業後にランドセルリメイクを申し込んでくださった石川さまご一家。たくさんの思い出が刻まれたランドセルは今も、形を変えて真優ちゃんのそばにいます。
夢に向かって羽ばたく、
わが子へのエールを込めて
心臓疾患を持って生まれてきた、真優ちゃん。父親の祐樹さんは、真優ちゃんが誕生した翌日から一眼レフを構え、懸命に生きようとするその命を撮り続けました。祐樹さんのまなざしを通して切り取られた写真には、命の尊さや美しさ、母娘の凛とした強さが写し出され、見る人の心にぬくもりを与えてやみません。
2023年ご入学用の「土屋鞄のランドセルカタログ」では、祐樹さんの写真をお借りして掲載=スライド1枚目の写真。アンティークモデルの赤色のランドセルを背負いながら、誇らしげに手を上げて横断歩道を渡る真優ちゃんの姿が印象的でした。
家族をはじめ病院の医師や看護師など、たくさんの優しさを受けながらすくすくと成長し、小学校の卒業を迎えた真優ちゃんに、リメイクを提案したのは母親の晃子さんからでした。背負っているのか背負われているのかわからなくて愛らしかった入学式の日。親子でいろいろおしゃべりをしながら通った、小学校までの道のり。
「夫は、『真優を送り迎えしたあの時間は、すごくいい時間だった』とよく話します。その思い出の中の真優は、いつもランドセルを背負っていて。そんなふうにいつも娘のそばで成長を見守ってくれたランドセルと、卒業でお別れしてしまうことに寂しさを感じたんです」
リメイク製品は親子で相談して、ペンケースとキーチャームのセットを選びました。「だいぶ汚れているのですが、私には十数年使い続けているペンケースがあって。娘に『ずっと使いたいと思えるものが、手元に一つあるといいよ』と伝えると、『それが自分のランドセルからつくられたものだったらすてきだね』と言ってくれて」と晃子さん。
小学生のころは、鉛筆を筆箱にしまわず、ランドセルに直接入れていることがよくあったという真優ちゃん。リメイクから戻ってきたペンケースを開けてみると、内側には鉛筆で黒ずんだ見覚えのある部分が。一方のキーチャームには、彫刻刀か何かでつけてしまった傷跡がそのままに。
「手に取った瞬間、『わあ、ランドセルが小さくなって帰ってきた!』と。手触りも当時のままで、懐かしさと喜びで胸がいっぱいでした」
真優ちゃんは今、中学3年生になり、卒業後はものづくりを学ぶ学校へ進学します。絵を描いたり、人形をつくったりと、小さなころから手を動かすことが好きで、進路も自分で決めました。
そんなわが子に祐樹さんと晃子さんは、「『6年間使えるように』と一針ひと針丁寧に仕立ててくださったランドセル職人さんのように、真優には心のこもったものをつくれる人になってほしい。それが、私たちの夫婦の願いです」と思いを寄せます。
「リメイクしたランドセルには、どんな願いを?」と伺うと、「ペンケースやキーチャームに形を変えたランドセルには、夢に向かって進んでいく娘の傍らで時間を重ね続け、これからもずっと支えてもらえたらうれしいです」と優しい笑顔を見せてくださいました。
石川祐樹さん、晃子さん、真優ちゃん、優太くん
ブラジリアン柔術の道場の代表であり、写真家でもある祐樹さん。Instagramに投稿された1,600枚を超える家族写真は、フィルムカメラで撮影されたものです。2014年にはフォトエッセイ『蝶々の心臓』(宝島社)を発表しました。弟の優太くんは小学1年生。土屋鞄の黒色のランドセルを背負って、元気に通っています。
[石川さんのInstagram]
https://www.instagram.com/yuki_ishikawa_photo/