フォトグラファー・髙橋が土屋鞄のスタッフになったのは、10年近く前のこと。 今日まで、たくさんのご家族やランドセルを撮り続けてきました。 その間に自身も父親となり、日々の暮らしを重ね、この春、息子のいくみくんが「ランドセルを選ぶ年」に。今回は、そんな髙橋がカメラに収め、思いをつづった「息子のランドセル選び」を特別にお届けします。
土屋鞄スタッフ
フォトグラファー 髙橋
おしゃべりができるようになったばかりのころから、大人と話すことが好きで、いろいろな人とすぐに仲良くなれるいくちゃん。
興味を持ったものにとことん向き合う性格で、最近はカニやエビなど、水の生きものに夢中。特撮のヒーローに憧れた時期もあったけれど、昨年突如として卒業宣言。それ以来、一切見ていない。
自分で決めたルールにまっすぐ。
そんな彼も5歳になり、小学校入学を来年に控えて、自分のランドセルを選ぶ日がやって来た。
初めてカタログを眺めた日。
あまりかしこまった感じにはしたくなくて、おやつの時間にした。
お供にはたい焼き。
「へえ、いろいろなランドセルがあるね、かっこいい」
「いくちゃん、何色好きなんだっけ」
そういえば、ちゃんと聞いたことなかったな……と、ふと思う。
「青かな! 明るい青とか!」
「そうなんだ、黒とか紺とか暗い色もかっこいいよね」
なんとなく誘導してみたくなる……(笑)。
「ふーん」
まだ、これがいい!というのは特にないようで、パラパラとカタログをめくる。
「今度さ、お店に実物のランドセルを見に行こうよ」
「じゃあ、そのとき選ぶよ!」
あっさり、遊びの続きへ戻っていってしまった。
カタログの初見はこのような感じで、まだまだ実感はない様子。
お店に行く当日の朝。
いつものように、テレビで動画を見てリラックス。
リモコンさばきもお手のもの。
念のため、「もう一度カタログを見ておこうよ」と勧める。
でも、特にこれというのはなく、お店で決めるの一点張り。
果たしてどうなるのか、親も全く読めない。
ワタリガニやザリガニなど、最近夢中な水の生きものたちのおもちゃを並べて遊び始めたので、そろそろ行きましょうかね。
土屋鞄の「西新井本店」へは、日暮里・舎人ライナーで。
先頭車両はやっぱり特等席。自然と笑顔になっちゃうね。
「西新井大師西」の駅を降りたら、お店まではもうすぐだ。
お店に到着して真っ先に手に取ったのは、
「プレミアムカラー ジャスミンイエロー」のランドセル。
きれいな黄色はパッと目を引くもんね。
早速背負わせてもらう。
カタログを見たときに言っていた青ではなかったけれど、やっぱり明るい色を選ぶのかな、という親のドキドキ感も本人は意に介さず、たくさんのランドセルに目移りしている様子。
王道の黒のランドセルも背負ってほしいという親のリクエストで、スタッフさんに手伝っていただき比較してみる。
「2つ持てますー」
と、ふざけている場合ではないのよ……。
途中、工房でランドセルづくりに励む職人さんを見たり、 リメイクされたランドセルの見本を眺めたりしながら、気になるランドセルを試していく。
そんなとき、
「ぼく、これにします」とつぶやいたのが、
「ヌメ革 キャメル」のランドセル。
防水加工がされていない、革の表情が魅力的な鞄。
「え、めっちゃセンスいいじゃん」
と、手放しで喜ぶ親バカな父。
そこに来たか、という意外な選択もうれしかった。
彼の中では、この色がかっこいいと。
ただ、親も冷静になって、お手入れが必要なことを説く。
もちろん、それが味となり、すてきなランドセルになることも伝えるけど、「味」なんてまだわからないもんね……。
それを聞いたいくちゃんは、自分で使うからお世話は自分でしたいとのこと。
そうなると、お手入れが楽な方がいいかな。
スタッフさんに相談し、茶系のランドセルを比べてみることに。
そこで急浮上してきたのが、「RECOベーシック ブラウン」。
どちらかといえば、さっき気に入っていた「ヌメ革」の色味に近く、
背中の柔らかいベージュとの色合わせがまさに今、彼が好きな「カニ」に近いらしく、心に決めたようだった。
「これがいい!」
決まったランドセルと一緒に記念撮影。
ランドセルが届くころにはもう少し大きくなって、もっと似合うようになるかな?
ランドセル選びを終えて、お店の裏にある公園でひと遊び。
実はお店に入る前にも立ち寄って遊んだ場所。
無事にランドセルを決められて、初めに来たときよりホッとした顔をしていたのが印象的。
帰宅してからも「カニ」や「エビ」の研究(遊び)に余念がないいくちゃん。
寝る前に図鑑を見るのもいつもの風景だ。
そんな彼に改めて聞いてみた。
「ランドセル、なんであの色にしたの? 最近魚屋さんで買ったカニ、なんだっけ、ズワイガニに似てたから?」
「違うよ、クリガニだよ」
まさか、6年間使うランドセルの決め手が「カニ」であったことは、高学年になり、やがて使い終わるころには覚えていないかもしれない。
でも、自分で決めたルールにまっすぐないくちゃんらしく、ちゃんと自分の意志で数あるランドセルからお気に入りを見つけた姿は、最高にかっこよかった。
そんなランドセルと楽しい小学校生活が送れますように。
ランドセルを選んだ日は、きっとまた振り返るときが来るであろう、大切な一日になった。