ランドセル職人が話す
ものづくりのこと
2023年秋のある日、ランドセルをつくっている西新井工房に、地元足立区の小学生たちが社会科見学に来てくれました。
数年ぶりに工房で社会科見学を開催できることになり、職人たちは朝からソワソワ。
そんな様子とは裏腹に、こどもたちからは次々と質問が飛び出しました。
これまでお伝えしきれなかった、職人のこと、ものづくりのこと。「つちやのね」読者のみなさまにも、小学生の質問や職人の回答を通じてご紹介します。
─ 土屋鞄製造所で働いている職人さんは、何人ですか?
現在、東京都足立区の西新井、長野県の軽井沢、佐久の3カ所の工房を合わせて、約120人のランドセル職人がいます。大人向け製品を手がける職人を入れると、約200人です。
小学校のクラスに班があるように、職人たちにも班があります。肩ベルトやフタなど、パーツごとに分かれて担当。1人でつくるのではなく、150以上のパーツと300もの工程をみんなで協力することで、約1カ月かけてひとつのランドセルが完成します。
西新井工房と軽井澤工房は、お店と隣接しており、職人たちがランドセルをつくる様子をご覧いただけます(平日のみ)。お店に来られた際は、ぜひのぞいてみてくださいね。
─ 職人の1日の仕事は?
1日の始まりはラジオ体操から。土屋鞄の職人のトレードマーク、エプロンをつけて体をよくほぐします。ちなみにエプロンは、ランドセルの革に傷がついたり、ミシンや機材に洋服が巻き込まれたりしないよう、大切な役割を担っています。
班ごとの打ち合わせで、その日手がける色などを確認。よいものをつくるために、年齢や職人歴は関係なく意見を出し合い、作業を進めていきます。
ミシンや製品に向き合う時は集中の連続です。だからこそ、仲間たちとおしゃべりをしてリラックスするお昼休みも大切に。ここでの何気ない会話は、職人同士の仲を深め、チームワークを高めることにつながっています。
─ ランドセルづくりで大切にしていることは?
職人たちは毎日たくさんのランドセルをつくりますが、お客さまの手元に届くのはたった一つ。だからこそ、その一つひとつに願いを込めながら、細部まで丁寧に仕上げます。
けれど、丁寧なだけでもいけません。4月の入学までに、きちんとお届けすることも大事なこと。丁寧に美しく、かつスピーディーにつくれるよう、日々技術を磨いています。
こうして完成したランドセルを手に喜んでくれる子どもたちの姿は、職人たちの原動力に。お手紙やSNSで拝見するたび、大きな励みになっています。