ランドセルの絵を描く上で大切にしたことや、込めた思いについて。
デザイナーの皆川明さんと田中景子さんにお聞きしました。

minä perhonen
(ミナ ペルホネン)

自然の情景や社会への眼差しから想像を広げ、丁寧につくり進めたテキスタイルデザインを特徴とする。衣服に始まり、インテリアへとデザインの幅を広げながら、日々のための長く続くものづくりを目指している。ブランド名は、フィンランド語で「minä」は「私」、「perhonen」は「ちょうちょ」を意味し、蝶の羽のように美しいデザインが無数に広がり、羽ばたいていってほしいという願いが込められている。

皆川 明(みながわ・あきら) designer / founder
1995年に「minä perhonen」の前身である「minä」を設立。ハンドドローイングを主とする手作業の図案によるテキスタイルデザインを中心に、衣服をはじめ、家具や器、店舗や宿の空間ディレクションなど、日常に寄り添うデザイン活動を行っている。

田中 景子(たなか・けいこ) designer / CEO
2021年より「minä perhonen」CEOに就任。 手作業による大胆な構図と繊細な表現の図案を発表し続けている。様々な企画、コラボレーション、内装等にデザインを提供している他、国内外に赴き、それぞれの産地やメーカーの個性を生かしたものづくりを積極的に行っている。

今回のコラボレーションについて

“特別な鞄”を
一緒につくれる喜び

皆川
ランドセルは、こどもたちの心と体が大きく成長していく、貴重な時期に寄り添う“特別な鞄”ですよね。そんな鞄を一緒につくれるのはとてもうれしくて、僕も田中も喜んで描かせていただきました。
その中で大切にしたのは、こどもたちの自由な空想が入り込める、“余白のある絵”を描くこと。勉強して知識を身につけることはもちろん大事ですが、目の前の景色から空想を膨らませたり、目に見えないものを想像したり。心の成長には、そういうことも同じぐらい大事なんだよというメッセージを、私たちの絵から少しでも伝えられたらいいなと。

それは普段の服づくりでも大切にしていて、デザインを考えるとき、僕は現実と空想を行き来しながら、目に見える風景と、心で見た風景の両方を図案に落とし込みます。花を描く場合だったら、そこにある柔らかな風や香りまで描く。そうやって生まれたものを纏(まと)ってもらうことで、着る人にワクワクしてほしいし、豊かな気持ちになってほしい。土屋鞄さんがランドセルづくりに込める思いにも、通じるのではないでしょうか。

絵を描く上で大切にしたこと

自由な空想が膨らむ、 三つの絵

皆川
今回、僕が描いた“with friends”も、空想上の動物です。犬なのか馬なのか、もしくはこどもの考えるオリジナルの動物かもしれない。もう一つの“daily trip”も、チョウが花に見えたり、花がチョウに見えたり。つまり、何に見えてもよくて、ものの見方や価値観は一つではなく多様なんだという思いをひっそりと込めました。日々目にする中で、いろんな想像を巡らせて、物語のように自由に楽しんでもらえたら、うれしいですね。

daily trip

with friends

daily trip

with friends

田中
私の描いた“flowery memories”は、ちぎり絵の手法を使っています。色紙を手でちぎると面白い線が生まれ、その紙を重ねていくと、思いがけない絵が現れる。そういう偶然性を私自身も楽しむことで、皆川の言う、余白のある絵にできたらなと。
ランドセルの表はシンプルで、開くと絵の世界が広がる「アトリエ」シリーズの仕様もすてきですよね。朝一番に学校でランドセルを開けるとき、こどもたちはどんな気持ちだろう。それを想像したら、描く絵の中にたくさんの明るい花が咲きました。

flowery memories

こどもたちへのメッセージ

自分の心で感じて、考える。
それを大切にしてほしい

田中
花をモチーフにしたのには、もう一つ理由があって。花は美しく咲き誇る瞬間だけでなく、固いつぼみのときも花びらが散るときも、同じ一つの花ですよね。こどもたちも同じで、学校生活を送りながら、うんと楽しいときがあれば、悔しくて涙が出ちゃうときもあると思うんです。
でも、その時々のどんな感情もしっかりと味わって、自分の力にしてほしい。高学年になったとき、花の絵を見ながら「こんなこともあったな。あんなこともあったな」と思い出してもらえたらと、"memories”という名前を付けました。

皆川
田中が言うように、自分の心で感じて、考える。それは、ぜひ大切にしてほしいと僕も思います。そうやって心を耕す中で、好きなことを見つけたり、個性を輝かせたり。そうして、誰もが自由に自分らしく生きられるんだという感覚をこども時代から養うことができたら、その先にはきっと、心豊かな未来が待っていると信じています。

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