ランドセルの新しい「形」
「SHAPE」が生まれるまで

ランドセルの新しい「形」を――。そんな思いから生まれた「SHAPE」シリーズ。製品づくりに携わったデザイナーの田尻と、商品企画の南波に、誕生の背景やデザインへのこだわり、込めた思いなどを聞きました。

誕生の経緯

こどもたちの「好き」を形に。
新しい「すてき」を生み続ける

田尻(写真右)
ピカピカのランドセルが主流だった時代、マットな質感のランドセルを送り出したり、無地が一般的だった中、内装にイラストが広がる「アトリエ」シリーズをつくったり。これまで土屋鞄では、新しいランドセルを提案し続けてきました。

南波(写真左)
それは、こどもたちに「愛される鞄」をつくりたかったから。時代とともに、こどもたちの「好き」の形も変わっていきます。そんな流れの中で、こどもたちの心に届くランドセルをつくるには、「本物」を追求して、新しい「すてき」を生み続けていかなければならない。土屋鞄で脈々と受け継がれてきたその思いが、「SHAPE」の出発点となっています。

田尻
つくりたかったのは、無難ではなく、期待を超えるランドセル。だから、革から金具などのパーツまで、全て新しいものを使うことにして。社内スタッフや職人だけでなく、鞄に関わる業者さんとも、何度もやりとりを交わしてつくり上げていきました。

「柄」への思い

成長を願う気持ちを、
「ヘリンボーン柄」に込めて

南波
「新しい形」をどう表現するか。ランドセルに関わるメンバーでミーティングしている時に、「近ごろ、総柄が気になるよね」という話題に。そこで「柄」に挑戦してみようとなりました。

田尻
「柄物は飽きるのでは?」と心配される方もいるかもしれませんが、わたしはその発想を覆したくて。どんなものでも、長く使ううちに愛着が増したり、反対に飽きたりすることはあると思います。「では、愛着を感じる柄は?」と考えた時、頭に浮かんだのが、幾何学模様のヘリンボーン柄でした。

田尻
普段、目にしている建築や家具、草木の葉っぱや雪の結晶などの自然界の中に、幾何学模様は意外と潜んでいます。日常に溶け込んでいるものであれば、きっと飽きることはないだろうと。

南波
さらに、「柄」にメッセージを込めることで、愛着がより深まるかもしれない。だから、お子さまに対するご家族の思いを表現できたらと考えました。親から子へ、そのまた子へと連綿と紡がれていく愛情。それを表現するには、連続的な柄を織りなすヘリンボーン柄がぴったりでした。

デザインへのこだわり

「シンプル」を追求。
時代に合わせたスマートさを

南波
ランドセルのベースの形は、土屋鞄の定番です。背負いやすいことが一番大事ですから、長年培ってきた基本を大切に。そこから、「何ができる?」と考えて。

目指したのは、シンプルで洗練された形。だから、なくても事足りるもの、例えば、時間割を入れるセルや側面のベルトを外すなど、一つひとつのパーツと向き合って、引き算していきました。

田尻
そうやって全体のバランスを図りながら、今の時代らしいスマートさを追求していきました。柄による「緻密」と、間による「余白」にも気を配って。

佇まいや品格は、ある一部だけこだわれば表現できるというものではなくて、細やかな手間や発想がいくつも集まってこそ表現できるものではないかなと。だから、金具の製作にも時間をかけました。機能的な金具が、ランドセルに美しさを添える「装飾」になるように。そうして生まれたのが、波紋のように連続的な円を刻むデザインです。

色と革

「色が映える革」を求め、
色ごとに原皮を使い分け

田尻
ランドセルの色は、「サーブルベージュ」「シアーブラック」「ネーフルブラウン」の3色。大人も使いたくなるようなシックな色は何だろうと考えて、この3色に。革は、「それぞれの色が一番よく見える表情」を大切にしたいと考え、数え切れないほどの原皮を見ながら、牛革の種類も、加工の仕方も異なるものを選びました。

「サーブルベージュ」は顔料で色をつけ、表面にシボ(細かなシワ模様)を型押ししました。「シアーブラック」も顔料ですが、こちらは血筋など革らしい表情が見えるのが特徴。「ネーフルブラウン」は染料仕上げで、3色の中では一番革本来の風合いが強く、経年変化がある革になります。

南波
自然な風合いを生かした革なので、防水や保湿ケアが必要になります。でもそれはマイナスの要素ではなく、手をかけてランドセルと向き合った分だけ、愛着も深まっていくのかなと思っていて。革の風合いが少しずつなじんでいく様子や、お手入れをして自分だけの表情になっていく過程。そうした年月も含めて、楽しんでいただけたらうれしいです。

繊細な職人技

職人の熱意と技を
惜しみなく、ふんだんに

田尻
「SHAPE」を考える時、「ここまで高い理想を掲げて大丈夫かな」と迷うことがありました。頭の中で考えることはいくらでもできますが、実際に形にするのは職人たちなので。でも、私の迷いを察した職人のほうから「本当にこれでいいの?」と。「高みを目指したい」という思いは職人も同じ。共通の思いを掲げて、お互いの理想を交わし合いました。

南波
「SHAPE」には、職人の熱意や技術もたくさん盛り込まれています。例えば、フタの縁に施した「コバ塗り」という技法もその一つ。断面がほつれたり、黒ずんだりしないよう、コバ液という特殊な素材を塗り重ねていく処理なのですが、手作業なので手間がとてもかかります。でも、手間をかけた分、美しく見える。

中でも「SHAPE」では、高級鞄に見られる、革と違う色のコバ液を使ってアクセントをつけています。でも、はみ出したら逆に美しさを損ねることに。そんな繊細な作業を、フタだけでなくほかのパーツも全部、ひび割れないように何重にも塗って。気の遠くなる仕事を、丁寧に施しています。

田尻
前ポケットのチャームは、組みひも職人による手製です。デザインの効かせとなる異素材を取り入れたくて。一本一本染色した糸を使い、ランドセルと同じヘリンボーン柄を組み上げていただいています。

「形」という意味の「SHAPE」をシリーズ名にしたのは、土屋鞄のランドセルの新しい「形」になればという願いから。革に型押ししたヘリンボーン柄を始め、「SHAPE」の個性は、手に取って、背負って、初めて輝くのではないかと思っています。どんな感性を持ったお子さまが、このランドセルに駆け寄るのだろう。どの色を選ぶのだろう。想像を膨らませると、顔がほころんできます。

デザイナー
田尻

ランドセル職人を経て、現職へ。長く愛用できる製品づくりを目指して、仕様もデザインも細部まで追求することを大切にしている。毎年、色とりどりのランドセルを前に、こどもたちが目を輝かせる瞬間に立ち会えるのが、幸せなひととき。

商品企画
南波

職人として入社し、製造・工程管理などに携わる。その後、ランドセルづくりの豊富な知識と経験を生かし現職へ。「こどもたちとご家族に納得していただける製品を届けたい」という信念のもと、最善を尽くす真摯な姿勢は、どの部署にいても変わらない。

デザイナー
田尻

ランドセル職人を経て、現職へ。長く愛用できる製品づくりを目指して、仕様もデザインも細部まで追求することを大切にしている。毎年、色とりどりのランドセルを前に、こどもたちが目を輝かせる瞬間に立ち会えるのが、幸せなひととき。

商品企画
南波

職人として入社し、製造・工程管理などに携わる。その後、ランドセルづくりの豊富な知識と経験を生かし現職へ。「こどもたちとご家族に納得していただける製品を届けたい」という信念のもと、最善を尽くす真摯な姿勢は、どの部署にいても変わらない。

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